GROOVE MERCHANT [OPEN”E”MUSIC OEM-0006 ]【CDレビュー】

ニューヨーク在住のジャズミュージシャン5人で結成されたジャズバンド「グルーヴ・マーチャント (GROOVE MERCHANT)」

GROOVE MERCHANT「LIVE TOUR in JAPAN 2017」

ベースの権上康志さんが主催する自主レーベル「オープンイーミュージック(OPEN “E” MUSIC)」から発売された1stアルバム「GROOVE MERCHANT」が2017年2月8日に日本発売されました。

GROOVE MERCHANT (OPEN

初の日本ツアーは、2月22日(水)「新宿 アーティストサロンドルチェ東京」を皮切りに、3月04日(土)「渋谷 ノナカ アンナホール」まで続くそうです。

GROOVE MERCHANT「LIVE TOUR in JAPAN 2017」

アルバム「GROOVE MERCHANT」には、ヴァラエティに富んだ8曲を収録。
2017年「ジャズ誕生100周年」に相応しい、ジャズにおける演奏スタイルの変遷を、アルバム1枚で俯瞰出来きます。

1曲目「Second Line (traditional) 」は、ディキシーランド・ジャズでお馴染みの「セカンド・ライン(Second Line)」と呼ばれるリズムパターンを巧みに取り入れた曲。
1980年代に颯爽と登場したウィントン・マルサリスらが掲げる「ジャズ原点回帰」の流れを汲んだ選曲だと思われます。

アーロン・バル(Aaron Bahr)の、ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)風カデンツァから始まり、三富悠斗さんの豪快なるテナー、末永尚史さんの饒舌なピアノ、権上康志さんの無骨なベース、小田桐和寛さんの軽快なドラムと、1曲目に相応しい、お披露目的なソロリレーが続きます。

2曲目「All Blues (Miles Davis)」 は、大名盤「Kind of Blue」収録のモード奏法による曲。
ディキシーランド・ジャズ風味の次が、モード奏法というのは意外(笑)。

饒舌なるリズム隊をバックに、三富悠斗さんの幻想的で落ち着いたソロが展開されます。

3曲目「Over the Rainbow (Harold Arlen) 」は、ミュージカル映画「オズの魔法使い」劇中歌。
権上康志さんがベースでテーマを演奏し、途中にアーロン・バル(Aaron Bahr)のゆったりとしたトランペットが絡む、広大な平原に「雨のち虹」的な風景が浮かぶような演奏です。

4曲目「Oleo (Sonny Rollins) 」はテナーサックスの巨人・ソニー・ロリンズ作曲のハードバップな1曲。
急速調で刻まれるリズムに乗り、末永尚史さんのきらきらとしたピアノソロが展開されます。

5曲目「On Green Dolphin Street (Bronislaw Kaper) 」は、映画「大地は怒る(Green Dolphin Street)」テーマ曲。

「Ahmad Jamal Trio At the Pershing (Argo)」で耳なじみのあるリズムパターンを下敷きに、三富悠斗さんのやや饒舌気味なソロが展開されます。
続くピアノの末永尚史さんはもちろん、アーマッド・ジャマル風の間を生かしたソロを聞かせてくれます。

6曲目「Caravan (Duke Ellington) 」は、デューク・エリントン楽団の十八番。

アーロン・バル(Aaron Bahr)の、ジョー・ニューマン(Joe Newman)を彷彿とさせる、畳み掛けるようなトランペット・ソロから、三富悠斗さんのオリバー・ネルソン(Oliver Nelson)を思い出させる豪快なるソロに引き継がれます。

小田桐和寛さんのドラムソロには、時々、ラルフ・ピーターソン(Ralph Peterson)が多用するフレーズが登場し、ラルフ好きな私としては、にやにやが止まりません(笑)。

“Caravan” by GROOVE MERCHANT

7曲目「The Sadow of Your Smile (Johnny Mandel) 」は、映画「いそしぎ」テーマ曲。
ゆったりとしたバラッド風リズムにのせ、トランペットのアーロン・バル(Aaron Bahr)がしっとりと歌い上げます。

8曲目「Groove Merchant (Jerome Richardson) 」は、サド・ジョーンズ & メル・ルイス楽団でお馴染みな曲。

小田桐和寛さんの叩くラルフ・ピーターソン(Ralph Peterson)直伝、「アート・ブレイキー風」ドラミングに、思わずニヤリとしてしまいます。

「Blues March」的リズムパターンにのり、フロント陣のファンキーなソロがお楽しみいただけます。
ファンキー風味となれば、ピアノもブロック・コードを多用。
4バースを経て、「ジャズ誕生100周年」に相応しい多彩なるアルバムは幕を閉じます。

なお、リピート機能付のCDプレイヤーをお持ちの方は、続けて1曲目を再生してみて下さい。
このアルバムの五目味的要素を、よりお楽しみいただけると思います。

Jazz Project “GROOVE MERCHANT”

1st Album “GROOVE MERCHANT”
OPEN”E”MUSIC OEM-0006 (2015)

01. Second Line (traditional)
02. All Blues (Miles Davis)
03. Over the Rainbow (Harold Arlen)
04. Oleo (Sonny Rollins)
05. On Green Dolphin Street (Bronislaw Kaper)
06. Caravan (Duke Ellington)
07. The Sadow of Your Smile (Johnny Mandel)
08. Groove Merchant (Jerome Richardson)

Groove Merchant:
権上康志(Yasushi Gonjo) , bass
アーロン・バル(Aaron Bahr), trumpet
三富悠斗(Yuto Mitomi) , tenor sax
末永尚史(Takafumi Suenaga) , piano
小田桐和寛 (Kazuhiro Odagiri), drums

Produced by Yasushi Gonjo

Recorded on November 9, 2015 at Nori Naraoka Recording Studio, NYC.
Design by Taiji Kuroda
Photo by Shoko Igarashi
Thanks to Riku Saito

権上康志(Yasushi Gonjo)さんは、山口県出身。

大阪音楽大学ジャズコース在学中より演奏活動を開始。
2014年より拠点をNYに移した若手ジャズベーシスト。
自主レーベル「OPEN “E” MUSIC」主催。

ジャズベーシスト権上康志のライブ日記

三富悠斗(Yuto Mitomi)さんは、新潟県で生まれた後、横浜市に転居(?)。

2011年よりNYに活動拠点を移したテナーサックス奏者。
2015年ニューヨーク市立大学シティカレッジ音楽学部ジャズ科を卒業。
ジョン・エリス(Sax)、スティーブ・ウィルソン(Sax)、マイク・ホロバー(Pf/Arrenger)のクラス、レッスンを受講。
自身のバンドでの演奏活動の他、ポップス系のアレンジも手がけるなど、幅広く活動中。

三富悠斗のブログ

末永尚史(Takafumi Suenaga)さんは、宮城県仙台市出身のジャズピアニスト。

東北大学卒業後、ボストンのバークリー音楽大学(Berklee College of Music)に進学。
パナマ出身の実力派ピアニスト、ダニーロ・ペレス(DANILO PEREZ)に師事していたみたいです。
2014年に拠点をNYに移した模様。

末永尚史

小田桐和寛 (Kazuhiro Odagiri)さんは、何処のご出身でしょう(笑)。

国立音楽大学在学中に「国立音楽大学ニュータイド・ジャズオーケストラ」でドラムを担当。
2010年まで「山野ビッグバンド・ジャズコンテスト」最優秀賞を、3年連続で受賞。
国立音楽大学卒業後、小曽根真氏の推薦でバークリー音楽大学に特待生で留学。

ラルフ・ピーターソン(Ralph Peterson)にドラムの個人レッスンを受けていたそうです。

小田桐和寛

Miles Davis – Kind of Blue

Ahmad Jamal Trio At the Pershing

Ralph Peterson – Art

Joe Newman at Count Basie’s