山本美恵 – Landscape 2 (2015)【アルバムレビュー】

山本美恵というミュージシャンと知り合ってもう、何年になるだろうか。

東京を拠点に活動し、ライブやレコーディングのある時だけ、新潟に戻っているので当方、機会があればライブに足を運ぶという感じかな。

彼女の演奏スタイルは、古くはバップに心酔した秋吉敏子、現在だと大西順子に代表される、音が粒だってリズミックに弾いた時にこそ、真価を発揮する奏法のように感じております。

現在活躍する多くの女流ピアニストが、ヨーロピアンというかメロディアスなスタイルと、ハーモニーの洗練さを優先するのに対して、パーカッシブな奏法という、少数派に属する奏法を追求しているように思えるのだが、真実は如何に。

そういうスタイル故か、はたまた元来の性格か、サックスやパーカッションなど刺激的なメンバーが加わると、演奏が俄然、面白くなる気がします。

山本美恵 - Landscape 2

写真左から:小竹美穂(vo)、金井拓明(g)、山本美恵(p, pianica)


前置きはこれくらいにして。

2015年09月11日に発売された「Landscape2 / 山本美恵 feat. 岡部洋一 (Sur La Musique」は、新潟出身のジャズピアニスト・山本美恵さんの「Landscape (2013)」以来、約2年ぶり7枚目のリーダーアルバムです。

Landscape 2

前作「Landscape (2013)」同様、パーカッショニストの岡部洋一さんを迎え、新潟県三条市にあるベーシスト・長野賢一さんの「スタジオKEN」で録音されました。

これまた前作に引き続き、中国の民族楽器・二胡で江辺玲子さんが参加。

今回は、デュオユニット「Kinzan」の相棒・金井拓明(g)さんと、新潟で活動する期待の若手女性ヴォーカリスト・小竹美穂さんが3曲参加。

小竹美穂さんは、今回の録音が初CD化だそうで、なんとも初々しいヴォーカルを聴かせてくれます。

このアルバムは表記通り、山本美恵と岡部洋一を中心とした編成で演奏されてます。

曲により二胡の江辺玲子さん、ギターの金井拓明さんが参加することで変化をつけつつ、3曲事に登場する小竹美穂さん入りヴォーカルナンバーが演奏の区切りの役目を担っている感じですか。


Landscape 2 – 山本美恵 feat. 岡部洋一 (Sur La Musique SLMO-0022)

山本美恵(p, pianica) 岡部洋一(per) 金井拓明(g) 長野賢一(b)
小竹美穂(vo) 江辺玲子(二胡)

録音:2015年05~06月 三条 Studio KEN

01. Scottish in Asia 6:08
02. Take Five (Paul Desmond) 7:02
03. Girl from Ipanema (Tom Jobim)[小竹美穂(vo)] 4:49

04. Mother-river 4:53
05. Take a break 3:46
06. Luiza (Tom Jobim)[小竹美穂(vo)] 6:04

07. Light of the town 5:00
08. Rain fortune 4:36
09. How high the moon (Morgan Lewis)[小竹美穂(vo)] 4:02

10. A night in Hongo 6:06
11. Only once 5:20

All Songs Written by Mie Yamamoto (Except M-2, 3, 6, 9)


以下、簡単に曲目解説などを。

まず、二胡の江辺玲子さんが参加する3曲を。ただ、9曲目「How high the moon」はヴォーカル曲なので、後ほど。

蛇足ですが、新潟の風景(Landscape)に何故、日本の三味線ではなく、中国の民族楽器である二胡が加わるのか、とても謎なのですが、新潟市は近年、中国との交流を深めているようなので、その辺りを考慮した編成なのかもしれません。

1曲目「Scottish in Asia(アジアのスコットランド人)」は、アジア側を二胡、スコットランド側をバグパイプ(bagpipe)で表現してるのかな。

4曲目「Mother-river」は、中国の大河をイメージした曲だそうで。

「Kinzan」の相棒・金井拓明さんが参加する2曲目「Take Five」は、デイブ・ブルーベック・カルテットの演奏でお馴染みの名曲。

5曲目「Take a break」と、7曲目「Light of the town(街の灯り)」は、ピアノとパーカッションのデュオ。

10曲目「A night in Hongo(本郷の夜)」と、8曲目「Rain fortune(雨の恵み)」は、ベースの長野賢一さんが加わるトリオ編成。

ゲストヴォーカルの小竹美穂さんが参加するのは3曲。

3曲目「Girl from Ipanema」と、6曲目「Luiza」は、ボサノヴァ風アレンジで。

9曲目「How high the moon」は、彼女が所属するビックバンド「スイングハードジャズオーケストラ」で、度々歌っている楽曲。この曲もまた、ボサノヴァ風アレンジ。

ラストはピアノソロによる11曲目「Only once」で静かにアルバムが終了します。


最後に、山本美恵さんと小竹美穂さんさんからメッセージをいただきましたので掲載します。

☆リーダー:山本美恵さんよりのメッセージ

山本美恵(p)

前作~Mie Yamamoto feat.Yoichi Okabe「Landscape」から2年。

その間、東京で岡部さんとライブを少しずつ行ってきて、色々な発見が有り、とりわけライブミュージックの素晴らしさを改めて感じた。

そして自分が平凡で、小さな殻の中で小さな音楽をやっている事を思い知らされた。

何とか殻を破ろうとレコーディングした第2弾~Mie Yamamoto feat.Yoichi Okabe「Landscape2」

実は正直、私にとって生易しいものでは無かったです。

しかし録音を聴いてみると、苦々しく必死(笑)のテイク程、いい意味の緊張感が溢れ、面白い仕上がりになっていた。

これはプロデューサーの長野賢一氏の手腕と岡部マジックのおかげに他ならない。

皆様に是非聴いて頂きたいアルバムです。

華を添える多彩なゲストの演奏も素晴らしいです。




☆ゲストヴォーカル:小竹美穂さんのメッセージ

小竹美穂

初めてのレコーディングという事で、緊張と不安はありましたが、共演していただいた方々にいろいろ教えていただきながら無事に録音する事が出来ました。

今回参加させていただけて、本当に光栄です。

Landscape=景色、風景という意味があるのですが、一曲一曲聴いていると、それぞれの異なった情景が目に浮かんできます。

本当にいいアルバムなので、沢山の方に聴いていただきたいです。




パーカッション奏者の岡部洋一さんは、ベースの長野賢一と組んで、異色のアルバムを制作しております。

新潟県燕市にある「福勝寺」住職・黒田玲映さん率いる「黒田組」と共演した、お経とのコラボレーション「感覚の地平線〜福勝寺本堂にて〜」というライヴアルバムは、なんと2枚発売されています。


さて、いつもとは違うアルバムレビュー、如何だったでしょうか?

新潟で活躍するミュージシャンの自主制作アルバムは、まだありますので、機会をみてご紹介したいと思います。