不滅の宇宙戦艦ヤマト – ニュー・ディスコ・アレンジ (1978)

最近、思うとことあって、中~高学生時代に買ったレコードを、デジタル化する作業を進めております。

私自身、学生時代によく聴いてたモノといえば、山下達郎、大滝詠一、稲垣潤一などのいわゆる「ミューミュージック」と呼ばれる音楽と、「アニメのBGM」。

書き出すと、物凄い落差がある感じがしますが、今改めて聴き比べると、日本の「イージーリスニング(BGM)~歌謡曲~ニューミュージック」には、スタジオミュージシャンの活躍含め、色々と共通項が浮かび上がってきまして。

その辺を「宇宙戦艦ヤマト」を皮切りに、アニメBGMマニアの方とは別の視点で、解説してみようかと思います。


YAMATO SOUND ALMANAC 1978-IV「不滅の宇宙戦艦ヤマト ニュー・ディスコ・アレンジ」

「不滅の宇宙戦艦ヤマト – ニュー・ディスコ・アレンジ」なるレコードは、新潟県内どこかの中古屋さんで購入したはず。

1978年12月25日に、日本コロンビアからではなく、ポリドールから発売(MR-3162)。
他社から発売されても、西崎義展氏プロデュース。

故・宮川泰氏自身の作編曲で、ヤマトの名曲がディスコ調の音楽に、華麗なる変貌を遂げた作品です。

Yamato Disco Theme

日本における第1次ディスコブーム期(1975~1979)に企画された、今聴いても色褪せない「ディスコ歌謡」アルバムの一枚だと思います。

宮川泰氏といえば、ジャズバンド「渡辺晋とシックス・ジョーンズ」のピアニスト・編曲家として名を上げてから、「恋のバカンス」で大ヒットを飛ばしたザ・ピーナッツを育てたりと、和製ポップスの開拓者の一人と呼ばれる、昭和の日本歌謡界が生んだ偉大なる音楽家です。

当時ヒットしている音楽スタイルを、嫌味なく自分の作品に取り込む手腕は、ピカイチではないかと。

「不滅の宇宙戦艦ヤマト」を聴き通して思うのは、『恋はみずいろ(Love Is Blue)』、『エーゲ海の真珠(Penelope)』、『オリーブの首飾り(El bimbo)』などが有名な、フランス共和国マルセイユ生まれのイージー・リスニングの巨匠、ポール・モーリア(Paul Mauriat)氏が1976年に発売した、ディスコサウンドを意識したアルバム「Love Is Still Blue – Paul Mauriat Disco Sensation」の影響が、随所に見受けられること。

Paul Mauriat _ エーゲ海の真珠(ディスコ・ヴァージョン)_Penelope (DISCO VERSION)_ ポール・モ-リア・グランド・オーケストラ

ポール・モーリア楽団といえば、何と言っても「エレキ・チェンバロ(英語ではハープシコード)」が奏でるメロディが印象的な曲、多いですよね。

Paul Mauriat – LOVE IS STILL BLUE 恋はみずいろ 45R.P.M.


次に、ポンタこと、村上秀一氏の躍動感溢れるドラムであろう演奏が、随所に聴けること(メンバーが記載されていないので、あくまで推定)。

まあ、この頃の日本で録音された歌謡曲のバックで、村上秀一氏が大活躍していた頃でもあります・・・。

1978年といえばポンタ氏のドラムが堪能出来る、山下達郎氏のライブアルバム「It’s A Poppin’ Time」が録音、発売された時期ですね。

アニメのBGMをディスコ・ビートに変貌させるため、「さらば宇宙戦艦ヤマト音楽集(1978年8月1日)」にも参加してたらしい、何でもござれの村上ポンタ氏を全面的に起用するのは、大正解だったのではないかと思われます。

宇宙戦艦ヤマト2 ディスコアレンジBGM場面集


その他、「推定」される演奏者は、スキャットの川島和子氏、ピアノの羽田健太郎氏、トランペットの宮下明氏、ガット・ギターの木村好夫氏、ソロ・ヴァイオリンの外山滋氏、シンセサイザーの松武秀樹氏あたりかなあ。

その他、石川晶とカウント・バッファローズのドラム、石川晶氏、ベースの寺川正興氏も、参加してると思われ。

あと、魅惑的なためいきでディスコ会場独特の猥雑さを加味する女性コーラス隊は、シンガーズ・スリー(伊集加代子、和田夏代子、鈴木宏子)か、沖縄出身の3姉妹グループ「EVE」のいずれかだと思われますが、この感じだと、シンガーズ・スリーの方なのかなあ・・・と(推定)。

「白色彗星」の印象的なパイプオルガンは、「宇宙戦艦ヤマト2199」及び「宇宙戦艦ヤマト2202」の音楽を担当してる、宮川彬良氏(クレジットは「志村拓生」名義)でしょうね。

ヤマト 白色彗星帝国(ディスコアレンジ)

この色モノ扱いされがちな「不滅の宇宙戦艦ヤマト」、アニメ関連の曲をよく取り上げるDJ諸氏は、一度聴くべきアルバムだと断言しておきますね。

アニメBGMを全編ダンス調にアレンジしたアルバムは、これと、山下達郎バンドの重鎮・ベースの伊藤広規氏が参加する「ダンシング・ザブングル」くらいしか、思いつかないですから・・・。

あと、ドラムの村上秀一氏のファンで、このアルバムを知らない人が居たら、中古レコード屋さんで探す価値のある1枚でしょう。

1978年当時、スタジオでは向かうとこ敵なし、絶好調だったであろうポンタ氏のドラム、今聴いても「凄い」の一言です。


それでは簡単に、各曲を紹介しておきましょう。

side 1
★1曲目「 宇宙戦艦ヤマト メイン・テーマ」
 ディスコビート特有のベースドラムの4つ打ちが強調され、間奏などに女性コーラスが入る他は、原曲に忠実なアレンジ。

★2曲目「白色彗星」
 印象的なパイプオルガンが響き渡る後、ドラムとギターがタイトなビートを刻みます。エレキ・ギターのソロが、ロックっぽさを強調してるかな。

★3曲目「真赤なスカーフ」
 哀愁漂うトランペットのイントロから、ラテン風のリズムに変わる所が爽快ですね。途中のラテン風味のトランペット・ソロがまた、素晴らしい。

★4曲目「イスカンダル」
 パーカッション主体のリズムから、エレキ・チェンバロによるテーマが登場するあたりが、まさにモール・モーリア風味(笑)。ソロ~セカンド・テーマはシンセサイザーかな。
 原曲同様テーマに絡んでくるストリングスも、ロックビートに乗って躍動的です。

★5曲目「テレサのためいき」
 物憂げなスキャットから始まるこの曲、チークタイム用か。

★6曲目「想人(おもいびと)」
 ギターのカッティング・ビートに乗り、エレキ・チェンバロがテーマを奏でるこの曲も、モール・モーリア風味全開です。

side 2
★7曲目「アンドロメダ」
 ディスコビート特有のベースドラムの4つ打ちから始まり、女性コーラス隊が入ってますが、この曲も原曲に忠実なアレンジですね。ラストに近づくにつれ、女性コーラス隊が大活躍します。

★8曲目「襲撃のテーマ」
 原曲に忠実なアレンジで、よりタイトというかロック寄りの演奏です。

★9曲目「好敵手」
 モール・モーリア風味を混ぜつつ、重厚なストリングスが絡み、ホーンセクション続き女性コーラス隊が飛び出すという、ラーメンの「全部乗せ」的なごった煮アレンジ。間奏に登場する女性の「ため息」は、子供の頃聴いて、いたたまれなくなった記憶が(笑)。

★10曲目「デスラーのテーマ」
 やや落ち着いたテンポでバラッド風に演奏されるこの曲、ストリングスの動きが、あれ、シティ・ポップスの某アルバムで聴いたようなデジャブを(後述)。

★11曲目「雪の最期」
 印象的なガット・ギターで始まり、フルートや流暢なストリングが続きます。

★12曲目「大いなる愛」
 端正なピアノによる演奏で始まり、ドラムのディスコ・ビートをやや強調した他は、原曲に近い演奏が続きます。


不滅の宇宙戦艦ヤマト – ニュー・ディスコ・アレンジ (1978)
YAMATO – I adore the eternity of LOVE

不滅の宇宙戦艦ヤマト -  ニュー・ディスコ・アレンジ (1978)

Polydor MR-3162 (1978)

演奏:ヤマト・ディスコティック・オーケストラ
作曲・編曲・指揮:宮川泰

西崎義展プロデュース / 制作ディレクター:石川浩二 / レコーディング・エンジニア:瀬沼弘洋 /

Recorded & Mastered October – November, 1978 at Sound City, Mouri Studio, Polydor Studio.

side 1
01. 宇宙戦艦ヤマト メイン・テーマ 4:31
02. 白色彗星 4:03
03. 真赤なスカーフ 3:53
04. イスカンダル 4:10
05. テレサのためいき 2:20
06. 想人(おもいびと) 2:38

side 2
07. アンドロメダ 3:37
08. 襲撃のテーマ 3:04
09. 好敵手 4:28
10. デスラーのテーマ 3:53
11. 雪の最期 3:31
12. 大いなる愛 3:55

不滅の宇宙戦艦ヤマト -  ニュー・ディスコ・アレンジ (1978)



先ほど「豊田有恒 – 「宇宙戦艦ヤマト」の真実 ーいかに誕生し、新化したか(祥伝社新書)」という本を読み終えました。

「宇宙戦艦ヤマト」プロデューサーの西崎義展氏と著者の豊田有恒氏は共に、武蔵高等学校出身だそうで。

SF設定という形で、づるづると「完結編」まで付き合わされた著者の視点で、西崎氏の「宇宙戦艦ヤマト」に関する出来事を淡々と書き記しております。

同時代の寵児・角川春樹氏と西崎氏の「相違点」や、キャラクター原案・松本零士氏との裁判の顛末など、淡々としつつダークな視点で綴られる文章は、なかなか読み応えがありますね。

そういえば松本零士氏の新作「新宇宙戦艦ヤマト」も、裁判で負けた関係で、続き書けないんだろうなあ・・・。


蛇足。

 久保田早紀さんの最もシティ・ポップス寄りなアルバム「エアメール・スペシャル」の最後を飾るバラッド「長い夜」のストリングス・アレンジは、バラッド風味の「デスラーのテーマ」からの影響を、モロに受けていると思います。ていうか、ぼけーっとしてるとき、続けて聴いても違和感ないと思います。

 なお「長い夜」の編曲は、歌謡曲からアニメのBGMまでこなしていた、萩田光雄氏でございます。


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